2018年 秋、神戸号
 コオロギの鳴き声に秋の気配を感じる頃となりました。殊の外暑い夏でしたが、皆様お元気でいらっしゃいますか。8月の終わりに、「あしやYOコーラス」が歌われる「ひとつ」の合唱指導に行ってまいりました。

 昨年の4月にもご紹介させていただきましたが、芦屋在住の藤島章子さんは、1995年の阪神淡路大震災の直後から、芦屋市松浜公園の中の赤いカナディアンテントを借りて、あしやY(Young)O(Old)コーラスの練習を始められました。

 発足したのが奇遇にも「ひとつ」が誕生したのと同じ1995年4月という「あしやYOコーラス」。あれから23年経った今年の10月7日に、芦屋ルナホールにおいて「ひとつ」を歌われるというので、その練習を聴かせていただきに行ってまいりました。

 新しくネットワーク会員になられた方のために、もう一度昨年の春号に掲載された藤島さんの手記をご紹介させていただきます。

現在の松浜公園
あしやYOコーラスと藤島章子先生
淡路島のマリンバ奏者 中田さん
〜『ひとつ』に寄せて〜 藤島 章子
 私と「ひとつ」との出会いは、今年2月、なんと大丸芦屋店の地下食料品売り場でのことだった。

そこで私は数年前に亡くなられた女声メンバーの娘婿さんで音楽に造詣の深いWさんにばったり出遭ったのだが、コーラスで新たに取り組む曲を決めかねていた私は「楽譜屋さんで2時間立ちっぱなしで探しても、なかなかうちに合う曲が無くて困っているんです…」と伝えた。

するとWさんは即座に「こんな曲があるよ」とポケットからICレコーダーを取り出し、イヤホンを私に渡して『ひとつ』を聞かせて下さったのだった。デパ地下の賑わいの中だったので、曲全体を把握できたわけでは無かったが、直感的に「これだ!」と思い、その場でスマホから楽譜が出版されているかどうか確かめた。

その時は、『ひとつ』がまさか阪神・淡路大震災をきっかけに作曲されていて、しかも私たちのコーラスの誕生とほぼ同時期に生まれたということは知る由もなかった。

 私たち「あしやYOコーラス」もまた阪神淡路大震災とは切っても切れない深い縁がある。
平成5年に芦屋市の肝いりで結成された「高齢者の生きがいと健康づくり、地域社会への貢献」を理念とする『あしやYО倶楽部』の一グループとして、「あしやYOコーラス」が生まれたのは、1995年4月、まさに震災の爪痕も生々しい芦屋市の赤い避難用テントの中でのことだった。

『あしやYО倶楽部』で前年11月から始められていた「歌の集い」のメンバー数人が、それぞれ被災しつつも、「もう一度皆で歌いたい、共に前を向いて生きていきたい」との希望を胸に、松浜公園に建てられたカナディアンテントに集まり、それぞれ近所の被災高齢者や知り合いを誘って歌の練習を始めたのである。当初は斉唱であった私たちの歌のグループも、22年の間に混声四部合唱を歌う合唱団にまでに成長した。最高年齢91歳、平均年齢75歳越えの合唱団が「ひとつ」を高橋さんのイメージ通りに表現することは難しいかもしれないが、大切に練習を重ね、私たちの精一杯の演奏をいつか高橋さんに聞いて頂くことが出来たら、これほど嬉しいことはない。

 空、海、心、星・・・言葉に何の形容もされていないがゆえに、歌う者と聞く者の心に実物が直に迫ってくる。「あなたの部屋に野の花ひとつ いつも安らぎを届けてあげたい」温かい歌詞と讃美歌を思わせるようなメロディーが無限の広がりをもって私たちの心に沁みわたってくる。私はつくづく自分が旧式のアナログ人間で良かったと思う。インターネット経由で問い合わせるのが億劫だった私は高橋さんのホームページに記載されていた電話番号に直接問い合わせの電話をかけたのだ。ご本人と直接お話しできたことで高橋さんの「ひとつ」への深い思い、そして温かいお人柄にじかに触れることができ、また、不思議なご縁を感じさせて頂くことも出来た。

 この度、『ひとつ』と高橋晴美さんという稀有のアーティストとの出会いによって22年の歩みを振り返ることができ、私にとってもコーラスにとっても新しい春を迎えられた感がある。 
心からの感謝を込めて、この拙い一文を高橋さんと『ひとつ』に捧げたい。
平成29年4月8日
あしやYOコーラス指揮者 藤島 章子
 藤島さんは、昨年の夏に我が家を訪ねて下さいましたが、あれから丁度1年、今度は私が芦屋へ行かせていただきました。新神戸に着くと、改札に藤島さんが迎えに来てくださっていて、1年ぶりの再会を喜び合いました。読売ジャイアンツの常宿であるという「竹園ホテル」にチェックイン。部屋からは茜色に染まる六甲山が見渡せて、お部屋にはチョコレートと野の花のカードが…。粋な計らいに、心が温められました。

 その日は丁度、沖縄からご主人との関西旅行で有川さんがいらしていて、夜は藤島さんオススメの「イレラあしや」というフレンチのお店で美味しいフランス料理のディナーを堪能しました。シェフは本場フランスで勉強された方で、懇切丁寧に一品一品の説明をしてくださいました。何と美味しかったこと!!いつもは小食の私が完食!有川さんと話に花を咲かせているうちにあっという間に時間が経ち、次回東京で会う日を約束して、芦屋で別れました。

 翌日は10:10に男声団員お二人がホテルまで迎えにいらして下さり、芦屋ルナホール(芦屋市民会館)の練習室へ。そこで迎えて下さったのは、赤いテントでの発足当時から23年間コーラスを続けて来られた女声団員の方と、藤島さんのお母様!ルイボスティーを入れて黒豆と栗の入った美味しいお菓子でもてなしてくださいました。娘さんが指揮指導するコーラスで歌っていらっしゃるお母様、なんと素敵な親子関係でしょう…。

 あしやYOコーラスは平均年齢が78歳と伺いましたが、その声の生き生きしていらっしゃること!シニアーだけが集まった合唱団には、技術を越えた温かみ深みが感じられました。人生の様々な痛みを知っているからこそ、乗り越えてきたからこそ表現できる「味わい深さ」なのかもしれません。淡路島から参加されているプロのマリンバ奏者中田さんの演奏も素晴らしく、最後は私も一緒に「一生に一度のあしやYOコーラスとの 『ひとつ』」を心込めて祈り込めて弾かせていただきました。


震災の爪痕をそのままに保存
 その後、藤島さんとピアニストさんと一緒にお寿司懐石をいただき、男声合唱を見学してから、神戸を案内していただきました。

 藤島さんの指導は実にエネルギッシュで、お年寄りをやる気にさせてぐいぐい引っ張ってゆくバイタリティーの塊でした。これだから、赤いテントから出発して大勢のシニアーの方々を指導してこられたのだ…と大いに頷けました。

左から、「ブロインドリーブ」「大林さんと藤島さん」「ブロインドリーブのステンドグラス」「布引ロープウェイから神戸の夜景」
 神戸を車で案内してくださった大林さんは、帰りの新幹線までの限られた時間の中、見事な運転で高速を駆け抜け、特に被災がひどかった長田区、須磨区を通り、淡路島の見える明石海峡大橋、震災の爪痕がそのまま残されている神戸港を案内してくださいました。交通渋滞が殆ど無かったため、藤島さんの予定通りに、教会がそのままカフェになっているブロインドリーブでとびきり美味しいサラダサンドをご馳走になり、そして旅の最後は布引の滝が見えるゴンドラ「神戸布引ロープウェイ」に乗って震災から見事に再興を果たした神戸の夜景を一望してから新神戸の駅へと向かいました。ゴンドラから見える神戸の夜景の美しかったこと…。様々な思いが脳裏を駆け巡りました。

 数日前まで雨の予報だった二日間は見事に晴れ、藤島さんのお母さまが藤島さんに仰るには「晴美さんのお母さまがあなたに『晴美をよろしく頼みます』と言って、あなたを使っていらっしゃるのよ!」との事。

 私が未だよちよち歩きの頃、母は私を連れて京都から神戸の元町までよく私の靴を買いに行ったと聞かされておりましたが、きっと、母はこの神戸の旅を懐かしみ、心から喜んでくれていたのではないかと思います。ブロインドリーブで、母の好きそうなクッキーをお土産に買って帰りました。

 震災から23年…。大きな苦しみを歌と共に乗り越えて生きて来られた「あしやYOコーラス」の方々と、団員を愛と誠で引っ張って来られた藤島章子さんに心からのエールを送りたいと思いました。新幹線のホームまで送ってくださった藤島さんと握手をしながら再会を約束し、窓から手を振って東京への帰途に就きました。
大丸芦屋店の地下食料品売り場の不思議な出会いから始まった今回の神戸の旅、「ひとつ」がもたらせてくれた心温まる二日間を、またひとつ、思い出のページに飾りました。


藤島章子様からの心温まるお返事をご紹介
高橋 晴美 様

こちらこそ、遠いところお越し頂き、有難うございました。

晴美さんのピアノとマリンバのオブリガード付きの演奏は至福のひと時でした。まさに一期一会の『ひとつ』!
コーラスが曲のスケールについて行けず、思わず私がメロディーを大声で歌ってしまいましたが、それがまたとても心地の良い新鮮な体験でした。

コンサートより昨日のあの時間こそがYOコーラスにとって、私にとっての「ひとつ」の本番だったと感じました。
コーラスは気の遠くなるほど長い時間をかけてやっとあそこまで歌えるようになりましたが、まだまだ余裕なくヨチヨチ歩きの『ひとつ』で申し訳ありませんでした。

とはいえメンバーの名誉のために申し上げておきますと、音楽に関してはヨチヨチでも、本当にそれぞれ素晴らしい生き方、考え方をなさっている魅力的な方ばかりです。
23年間あのような方々と一緒にやって来られた私は本当に幸せ者です。
老化と死は誰にでも訪れることです。私も多くのメンバーを見送ってきました。(お葬式でも何度も歌いました。)
でも老化と死は人間の価値を損なうものではありません。心身ともに色々不具合が出てくる中でも皆さんの人生の大切なひと時が価値あるものになるよう全身全霊で、純粋な意図を持って音楽の世界に導くのが私に与えられた役目の一つだと思っております。

コンサートでは皆さんとともに『ひとつ』に込められた思いがお客様に伝わるよう精一杯頑張ります。
本当に十二分のお気持ちを頂戴いたしましたし、最高の形でお会いすることができました。

また良い季節にゆっくり神戸、芦屋方面に遊びにいらして下さい。
明石海峡大橋の向こう、淡路島にも見どころが沢山あります。お肌がツルツルになる温泉もあります。お越しの際は中田君が淡路島担当で案内してくれると思います。六甲などはまた神戸住民の大林さんが案内して下さいます。

またお目にかかって色々お話し出来る日を心待ちにしております!
お元気でお過ごしくださいますように…
藤島章子

 読み終わり胸がいっぱいになりました。そして、素晴らしい出会いをしみじみ感謝いたしました。

 少し話は変わりますが、去る8月5日、静岡県の浜松でVocalとPianoとViolinのコンサートのアンコールに「ひとつ」を歌いたいという事で、Violinの楽譜を依頼されたのが何と本番2週間前!取り急ぎパソコンから楽譜データを送り、リハーサルの録音データーをパソコンに送っていただき、電話でVocalとPianoとViolinの指導するという事を何度か繰り返し、何とか無事にコンサートが終了。そして、本番の写真と音源がパソコンに送られてまいりました。

実に便利な時代になったものです。これはこれで限られた時間の中で精一杯の誠を尽くしました。しかし…、実際に人と人が交流し、生の音を聴いてアドバイスし、共に音楽の感動を共有する時間はまさに「JewelryTime」であると、しみじみ思いました。神戸とのご縁は、きっとこれからも長く続いてゆくような気がしております。そして、是非、また神戸を芦屋を訪れたい!と切に思います。

 9月には、再び千葉に「夢飛行」「母に贈るうた」「ひとつ」の混声四部合唱の指導に行かせていただきます。又、新たな出会いが私を待っていてくれます。
 一方、コーラスハルミオンは、先日のコンサートをきっかけに4名の新団員が入団してくださいました。本当に嬉しい事です…。作品が出会わせてくれる一つ一つの出会いに心より感謝し、自分に与えられた役割を精一杯させていただきたいと強く思うものです。

 皆様も、実り多き秋を、どうぞお健やかにお迎えくださいませ。
2018年9月吉日
高橋晴美
高橋晴美の音楽ネットワークのご案内
『高橋晴美の音楽ネットワーク』は高橋晴美の音楽の素晴らしさや聴いたり歌ったりする喜びを分かち合い、高橋晴美の音楽をもっともっと日本中いや世界中に広めて行きたいという思いで立ち上げた音楽ネットワークです。

会報の発送などはすべて有志のボランティアで行われておりますが、ホームページの作成及び維持費、郵送費、紙代、印刷代などは会費によって賄われています。

会員の皆様には、数々の活動状況も含めホームページ、メールや郵送で皆様方のもとに届けさせて頂くだけでなく、CDやDVD、親睦会、コンサートの料金割引等の特典もございます。 高橋晴美の『愛と優しさの輪』を拡げてゆくために是非、音楽ネットワークのご入会、ご協力のほど宜しく御願い申し上げます。

◆年会費に関しまして
・PCメールでのニュースご案内をご希望の方:年会費2,000円
・郵送でのニュースご案内をご希望の方:年会費3,000円

上記の年会費を下記へお振り込みください。
・振込先 :ゆうちょ銀行
・口座名 :高橋晴美の音楽ネットワーク
・口座番号 :00180-1-446596

※メール会員ご希望の方は、必ずアドレスをご記入ください。
後援会長:池田誠晴
副会長:藤原浩男
事務局:堀江熙、櫻田富恵

高橋晴美のオリジナル曲を歌う直属の混声合唱団「ハルミオン」で一緒に歌ってみませんか?
詳細はこちら♪ 練習日程
▲TOP
Close