Chorus

コーラスハルミオン

「音楽朗読劇「愛に生きる」コンサート

(堀江熙 記)

 高橋晴美先生(以下、晴美先生)と力を合わせて「コーラスハルミオン」(以下、ハルミオン)をけん引して来られた晴美先生の夫君・高橋裕先生(以下、裕先生)が3月いっぱいで東京藝術大学附属高校を退任、それを記念するコンサート『音楽朗読劇「愛に生きる」 ~高橋晴美 愛と希望の世界~』が4月21日に同大学奏楽堂で開催されました。

 コンサートを音楽朗読劇のスタイルで行いたいと晴美先生に提案されたのは裕先生。それも、晴美先生の音楽人生をテーマにして作劇するという構想でした。今までやったことのないことに挑戦してお客様に喜んでいただこうという一心で提案されたということですが、プライバシーをノンフィクションで作劇してステージに上げることは非常に勇気のいることです。両先生が、これまで支えてくださった多くの方に感謝の気持ちを伝えたいというひた向きな熱い気持ちをお持ちになり、更に、お互いが強く太い信頼関係で結ばれているからこそ実現し得た音楽朗読劇と言えます。

▲【アンコールのステージで「Cantare」を客席と一緒に全員合唱、華やかにフィナーレを飾った出演者】

【左:朗読劇を終えて挨拶する (左から)朗読・三咲順子、ボーカル・石井智子、指揮・高橋裕、ピアノ・高橋晴美の皆さん】
【右:「高橋晴美の世界」を熱く歌ったPure Voices(左から、遠藤いつ子、西史子、中西由美子、佐々木理保子)の皆さん】


 会場は、全国各地からお越しくださった1,000人を超えるお客様で埋まりました。全席指定だったにも関わらず、お客様の出足が早かったため、開場をご案内の時刻よりも繰り上げたほどでした。
午後3時開演。プログラムは晴美先生の音楽人生を幼少期から順を追って紹介する形で進行しました。
演奏された曲は、劇中で前奏曲、間奏曲、独唱曲、合唱曲、インストゥルメンタルを含めて57曲、これにアンコールで歌った3曲を加えると60曲にも及びました。ほとんど全ての曲が両先生のオリジナルの作品でした。


 第一部は、裕先生が作曲された前奏曲からスタートしました。やがて、三咲順子さんによる晴美先生の幼少期を紹介するナレーションが始まり、晴美先生が当時の作品をご自身で演奏されました。プログラムの進行に連れて、ボーカルの石井智子さんとPure Voicesの歌が加わり、場面はいつしかお二人の結婚、海外での活躍へと展開、更に、第一部のエンディング場面では、晴美先生の代表曲「ひとつ」の誕生エピソードが紹介されました。ハルミオンはこのステージで、「夢飛行」と「ひとつ」を、晴美先生の曲への〝想い〟を込めて歌いました。


 休憩を挟んで第二部が始まりました。プログラムは佳境を迎え、晴美先生とご両親が強い絆で結ばれている〝様〟が繰り返し語られ、その中で、晴美先生が世に送り出す音楽の根幹とも言える『高橋晴美の世界』は、ご両親から受けた〝大きな愛〟によって培われたことが紹介されました。このステージは、合唱団の出番が多く、ハルミオンはナレーターの朗読に耳を傾けながら、裕先生の指揮で「母に贈るうた」「祝福のうた」「千年の時を越えて」「天と地の物語」など8曲をオーケストラの伴奏に乗せて、気持ち良く歌いました。このうち5曲は、第二部からステージに上がった混声合唱団「カントハルモニア」と共に歌いました。


 音楽朗読劇が終了し、晴美先生がお客様への感謝の言葉を述べられた後は、アンコールのステージでした。ハルミオンは、「ありがとう」をカントハルモニアと共演した後、お客様にもなじみ深い「ひとつ」と「Cantare」を客席のお客様と一緒に合唱しました。このフィナーレの場面では、裕先生が、客席を振り向いて躍動感にあふれた指揮をして、大いに盛り上がりました。


 終演後、一人のお客様が語ってくれた言葉に心をひかれました。これまでも『高橋晴美の世界』に足を運んでいたというお客様でしたが、「今回の朗読劇で『高橋晴美の世界』のルーツがご両親やご主人から受けた〝愛〟にあったことを知り、高橋さんの作り出す音楽がますます好きになった。音楽と朗読が溶け合って、付録つきコンサートを聴いた思いがした。聴きに来て本当に良かった!」と。これは、たった一人のお客様が発した言葉にすぎませんが、多くのお客様が同じように感じてくれたことに思いを致させ、更には両先生が目指した〝お世話になった方に感謝の気持ちを伝えたい〟という熱い気持ちが客席に届いたことに思いを致させてくれる大きな意味を持つ言葉だと思い、紹介させていただきました。


 ご来場の皆様には、3時間の長丁場にもかかわらず最後までお聴き届けくださり、心よりお礼を申し上げます。


TOP